※2020年に初めて本をつくった時の備忘録が下書きに永遠にあったようなのでもったいないから公開します。2年以上前の文章を読むのってすごい恥ずかしいね※
私とやおいとの出会いは中学生の頃だった気がする。
一般書店に平積みされている封神演義の商業アンソロをなんの気なしに見たら、申公豹と太公望がキスしていた。「あっこれ見たらいけない気がする」咄嗟にそう思い本を閉じ、逃げるように書店を後にしたが、家に帰ってしばらくはそのシーンが頭から離れなかったのを覚えている。
そんな出会いを経て(あまりに頭から離れなくて一週間後くらいにこっそり買いに行った)、そこからすくすく腐女子として成長し、大人になってゴリゴリ働くゴリラになって結構年を重ねた私は突如「同人誌を刷ろう」と思い立った。
元々若い時にWEBで同人活動を行ってはいたが、ついぞ本を印刷物として形に残すことはしなかった。いや、別にする意味は対外的には全然ないし、後始末のことを考えるとなんならしない方が絶対いいと思う。でもそういうことじゃないんだ。そうじゃないんだよ!!自分が自分だけのために自分のやりたいことをはちゃめちゃ詰め込んだ作品を、手触りのある「形」にしたいんだよ!!という勢いで初めて印刷所に発注をして紙の本を創ったので、将来近いうちにまた頭がおかしくなって次の本を創ろうとしそうな自分のために過程と結果を残しておく。
ちなみにまず先にできた本がこれ。
届いたとき嬉しくて手が震えた。
話を過程に戻す。
【1】仕様・印刷所を考える(どんな本にするか決める)
印刷をお願いするにあたり、以下を決めて見積金額と納期を確認する必要がある。私はある程度紙の選択肢があるところが良いなとうっすら思っていたのと部数は多くても10部でいいわと思っていたので、結局プリントオン、プリントキング、スターブックスあたりを見ながら、「印刷するのにスケジュール予約しなくていい」という締切守らないマンでもなんとかなりそうなプリントキングさんで刷ることを決めた。
①サイズ
②部数
③ページ数
④使用用紙
⑤カバー、帯有無
⑥その他オプション
①サイズ
出力形式として、一度でいいからてずから書いた駄文を「市販の文庫本」みたいな形にしたいという欲があったのでサイズは「文庫(A6)」。
②部数
部数については完全に自分用で、大っぴらに頒布する気もなかったので、最低部数の10部を選択(キャンペーン中で5部おまけ+奇数梱包の方が面倒っぽいくて献本1部の16部入ってたっぽい)。
※作った本をちゃんと頒布して収支をトントンで終わらせようとしている人は文庫やめた方がいいと思う。めちゃめちゃ経済効率が悪い→頒布金額が高くなりがちなので買える人をその時点で選んじゃう。クソ人気作者さん?いいから何も考えずにたくさん刷れ!!売れるんだったらいけ!!
③ページ数
ページ数については、検討段階で原稿がめちゃくちゃ途中だったが少しは背幅があるものにしたかったこともあり80ページ程度を想定して仮置き。正直この段階でレイアウトも組版も何もしていないので、自分の文章が「何文字くらいになりそうか」はわかるが「それが何ページになるか」を想定することが極めて難しい。とりあえず他同人作品の文字数とページ数をいくつか見てそれを参考にした。
ちなみに最終的に書きたいものを書いたら表紙回り入れて124ページになっちゃってた
④カバー、帯有無
印刷所によっては小説本用のセットがあったりする。なくてもサイズを選んでカバーと帯つけると市販の文庫本ぽくなるらしい。プリントキングさんは小説本セットがあるのでそちらを選択。カバーは必須で欲しかったのでつけて、帯は結構価格に響いたのでまあいいか、と諦めた(大丈夫、総文字数の9割5分セックスしてるよ。って帯にしたかったんだけど結果そんなにセックスしてなかったからというのもある)。
⑤使用用紙(カバー、表紙、本文、遊び紙)
・カバー:コート135K+クリアPP
紙は1種、かけるPPがグロスかマットかの2択。ほんとはマットニスがけが良かったんだけどまあないなら致し方なし!もし次回やるなら別途見積してもらおうかな。
今回表紙にできてタイトルにある程度ハマるような素材が人の別荘で撮った小樽の夜景しかなかったのでその写真を使ったんだけど、黒にPPで触るとめちゃくちゃ指紋が目立つ。市販文庫本からは遠ざかるがマットPPの方が頒布されるモノとしては優秀だと思う。そしてやはりマットニスは正義だ。
・表紙:上質135K
ご丁寧にプリントキングさんから「市販文庫っぽくするならこれ」というヒントが入っているので迷わずこれ。でも色選べないので白。クリームとかにしたい。これも次回問い合わせしたい。
・本文:書籍用紙70kg
当初は背幅を稼ぎたかったので書籍用紙90Kにしようかなと思ってたのだけど最終的に124ページになってしまったので、書籍用紙70Kに切り替えた。普通の文庫は62.5Kが多いっぽいのだけどプリントキングさんはそこまで薄い紙がない。70Kでも相当紙がしっかりして感じられるので、もし小説で90Kを使うならかなりポエティックな作風の方が相当レイアウトしっかりしないと厳しそうだなと思う
・遊び紙:色上質銀ねず
普通の文庫は遊び紙入ってないから要らなかったのだけどセットについてくるので入れてみた。紙圧とか書いてないから一体どうなってるのか現物を見ないとわからんなぁと思っていたのだが、多分薄口で、邪魔にならず色で全体を締めてくれてすごいよかった!これがセット標準は熱いし桃じゃなくて銀ねずを選んだ私そのころは正気だったらしい
⑥その他オプション
カバー取付:基本料金1080円+@25
つけた。結構折り巻き綺麗にやるの大変なので、そのくらいで済むなら安い。
→クリアPPかかってるのもあってこれ自分じゃ巻けないわってなった。素直に巻いてもらおう。ケチるところじゃない
以上の設定で6営業日後発送、当方北海道在住ですが航空便処理のようで中1日到着予定でしたが今航空便減ってるので発送遅延して中2日で届きました。致し方なし。
以上で見積金額はしめて26,090円。最初諭吉一枚くらいでなんとかするつもりだったんだけど全然なんともなってないがまあでも自分から自分へのプレゼントなので1ミリも妥協したくないし仕方ない。水着アビーで爆死以降ガチャも調子良いしまあええやろあっそういうこと言ってるからわえがちょっとお高く…
【2】黙って原稿を書く
作文するのに使ったのは以下。
・Google Keep(PC/iPad/iPhone/android)
会社のPCや家のiPadや寝ながらスマホまで、あらゆるデバイスで気が向いたというかノってる時に書きたいのでマルチデバイスで立ち上げやすいキープさんを使っています。
今回初めて1メモにつき上限文字数20,000字くらいって制限があるのを知ったので、それが嫌な人には向かないですね…
ここでひたすら作文するだけ。
今回は急にどハマりしたカップリングで死ぬほど原稿が書けそうな気がしていた(幻想だった)ので、内容についてはそれを書ききるだけで無問題……のはずだったんだけどここでも絶対妥協したくない根性を発揮してしまって永遠に原稿が終わらなかった。むしろ納品予定期日を10日くらいすぎた。
この状態で、話を書ききるのはもちろん、全体読み直してリライトをかける、エピソードの調整をする、重複して使いがちな表現を変更する、などの大きめの修正から、最後の文字校正・誤字脱字チェックまで完結させておくと次以降の工程がすごくスムーズに進むと思う。多分。
私は出来た(と思った)原稿をレイアウトに流し込んで、PDF出力して改行・改ページの位置含めてリライトリバイスしてしまったばっかりに、調整する→PDFで校正する→気に食わなくて直すのループをマジで10回以上やる羽目になって作業時間が無駄にかかったし終わらな過ぎて最後わりと心が折れた。
マジで読めば読むだけ粗が出まくってヤバかった。「ん?まてよこいつどこでパンツ脱いだ?」とか「いつの間に体位変わった?」とか「あれ?この話前の話でもおんなじこと書いてね?」とか「いやそもそもこいつはこんなこと言わねえな」とかが永遠に沸いて出てきてマジで納期なかったらずっとやってたと思う 怖い
【3】本文のページレイアウトを組んでPDFでチェックする
レイアウト→入稿データ(PDF)出力に使ったのは下記。
執筆用ではなくあくまで組版~入稿データ(PDF)制作用として利用しました。ある程度原稿ができたら一度流し込んでページ数のあたりをつけるのにも使用。
なんと無料で使えるけど、私は広告削除アドオンとアップグレードアドオンを購入。合わせて600円くらいだったか?ごめん覚えてない
広告削除アドオンはずっと画面を見てるのにちらちら広告が変わるのがめちゃくちゃ集中力を奪うので購入。アップグレードアドオンは、中に含まれている「ページレイアウト」という、編集画面を入稿データ(PDF)と同じレイアウトにできる機能が使いたくて購入しました。
・自分の好きな文庫本
レイアウトを決めるのには先達をパクるに限るぜということで、天地左右のスペースやフォントの種類サイズなどを実寸で比較してお手本にするものを決めます。
・Acrobat Reader DC(PC)
縦式で出力したPDFの見た目確認と文字校正用。
iPad用の無料版だと右開き設定が出来なかったのがすげー致命的で、会社のPCで校正してた。ありがとう会社。
作業手順は、縦式でページレイアウトを設定する(参考)「ページレイアウトについて: 縦式1966」ために、まず作りたいレイアウトの全容を自分が理解するところからスタート。先のお写真にあるように好きな本をいくつか見比べて、天地左右の空きサイズ、行数・行間・文字数、書体などを調べました。
最近は文庫の級数がかなり昔よりも大きくなっている(13Qくらいらしいな)と聞いていたのですが、自身が明治~昭和頃の作家の作品を好んでいることがあったのと、てめえで書いた間の抜けた喘ぎ声とかが3mmを超えるサイズで羅列される様に精神が耐えられそうにないな、という理由で時代に逆行?しらねーよとかなり文字が小さくなるであろう「41文字×17行」を選択。ちなみに参考にした本はどれもあと一歩ピンとこなかったので、カフカと安吾をマージしたみたいな設定にしました。
レイアウトでもう一つ印象がガラッと変わるのが天地左右のスペースの取り方。ぎゅうぎゅうに詰めて見せるような内容でもないが、あまりに余白が多いと間の抜けた喘ぎ声がまたクソみたいに間抜けに見えるので、ある程度きゅっと締まって見えるラインとして「天地15mm、ノド15mm、小口13mm」を選択。
…したんだけど、結局縦式さんの「本のレイアウトを縦式で真似るための方法について: 縦式1966」を参考にして自動調整をかけたので、仕上がりは天地が2cmあってすげー贅沢な感じに仕上がりました。まあ間抜けな感じより良いか!次は17×43字くらいで調整してみようかな…。小口は設定通り13mm。ノドの余白もこの本の厚さ(6mm)の開き具合ならちょうどいい感じかなと個人的には思っています。が、如何せん文字がめっちゃ小さい(2.25mmくらい)。私はこのくらいが好きだけどはちゃめちゃに小さいなんなら安吾のよりちょっと小さいくらい小さいので本買ってくれた人には申し訳ない気持ち
教訓:実寸出力をしろ
書体についてはヒラギノ明朝(https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1844)よりもひらがなが柔らかそうなのがいいな~と思ってたら丁度縦式のデフォルトに游明朝体
(字游工房|JIYUKOBO | 游明朝体ファミリー)があったので、そちらを採用。オンデマで文字が少し太っているのもあるのかもしれませんが、スミが綺麗に出て文字の強弱もあり、少し小ぶりな感じもあってすごく好みでした。フォントは次回も続投でOK。
その他設定はこんな感じ。
アプリ上の表示の「設定」と実質入稿データになるものを設定する「出力設定」は別なので、そこお気をつけくださいましね。ここにのせたのは「出力設定」の方です。
目次や奥付など、縦式で組みたくない部分についてはこのあと画像を作って挿入するのでとりあえずアタリとして、仕上がりサイズ(文庫なので105×148)にトンボ3mm足したサイズの長方形画像でもぶち込んでおいて、レッツPDF出力。
で、原稿の修正をしないみんなは誤字脱字と縦式上での改行ミスなどないかを校正しましょう。私のように画面上で校正する人は右開き設定してどうぞ。ほかに作ってて躓いたところは、今回オムニバス形式4話構成だったため左ページフッターに各話タイトル、右に本タイトルを入れたかったんだけど、
そうするためには各話のタイトルを見出し設定しなければならず、そのせいで各話タイトルを画像で設定できなかったこと。諦めて見出しセンタリングしたんだけどなんかちょっと左に寄りすぎてて冷静に見てたらすげーーーーーーー気になる気がしてきた見返すのやめよう
あと各話タイトルを右ページ配置、その裏は白、というのを徹底したかったがために、それに伴う改ページ上のリライトが発生したのがマジで地獄だった ウェブはそういうの一切気にしなくていいのマジでつえーなって感心した
【4】画像でつくるもの(カバーと表紙と中表紙と目次と奥付)をつくる
カバーと表紙を作るのに使ったソフトは以下。
・CLIPSTUDIO(iPad)
とりあえずそれっぽい写真を撮っておいてあったので、それに文字を乗せるために利用。目次とか組むのも結局これで全部やった
プリントキングさんの用意してるテンプレがpsdなので、開ける編集ソフトがこれだったというのが多分1番の使用理由
・Any font(iPad)
iPadでカスタムフォントを利用できるようにするために入れたよ500円くらいしたか?
→2023現在は素直にアドビフォントが一番いいと思う
最初雰囲気出すためにカバーから作ろうかな…とか思ったんだけど、バカ、カバーは正しい背幅がわからないとつくれないんだぜ…ということで書き上げて総ページ数が判明してから制作開始。プリントキングさんは使用用紙とページ数で背幅これだよ!という一覧を置いてくれているので、それで背幅をチェック。該当サイズのテンプレートをダウントードして、それをクリスタで開いて指示通りに制作。
印刷の仕事をしたことがない、レイヤーのある画像ソフトを使ったことがない人はその基本動作を学ぶところからスタートになるのがキツい
プリントキングさんのテンプレはわかりやすいし簡単な作り方もメモしてくれているので、その通りに作業。一般流通している文庫同様背の色を表1表4と違う色にしているので、背が細いこともあって折りズレがどのくらいでちゃうかな~と心配していたんだけどきっちり揃えてきてくれて感動しました。
最初タイトルは手書きしたものを貼ろうかなと思ってたのですが筆記体書くのがすげー下手になってたので大人しくフリーフォントにしました。上下ばらして配置少し調整しています。これも絶対実寸出力してサイズ感確認した方が良いと思う。今回は奇跡的に納得のいくバランスで仕上がってた。
次いで中表紙。各文庫を参考にして囲みケイ、文庫名、タイトル、ロゴの要素が必要と判断。ロゴ作りたかったんだけど時間なかったのであきらめてサークル名を突っ込んでごまかしました。
で、それと同じものを表紙に転用しました(どうせカバーかけるから)。これもテンプレの用意があるので、データをDLして利用。さくさくできる。
目次も少し整えたかったのでクリスタで制作。あと奥付も横書きでまとめたかったのとQR貼りたかったのでクリスタで制作。目次と奥付はノドを考慮して2mmノド側からずらしてセンタリングするのを忘れないことと思ったんだけどなんかほぼどセンターでもよかったんじゃないかという気もしている
【5】縦式に画像で作った中表紙・目次・奥付を挿入して入稿用データ出力
書いている通り縦式の画像挿入機能で中表紙・目次・奥付を挿入。
改ページが狂うことがあったのでめちゃくちゃPDF出力してチェックしてやり直してを繰り返してた。大丈夫なものが出来たら、それがそのまま入稿データになる。
出来たデータのプロパティを見ると、なんか指定したサイズより0.02mmとか余分な表記があるぞ…何事だ…?となったけどとりあえず入稿してみたら問題なく刷ってもらえたので、縦式のデータをプリントキングさんに入稿しても問題ないです。
【6】発注・データ入稿
プリントキングさんは仕様を決めて注文(発注)したその日にデータ入稿をすることになります。入稿データは「cover」「main1-120」などわかりやすい名称をつけてフォルダにまとめzipでアップロード。
ここで印刷ができないような不備があれば修正依頼メールがくるとのこと。なにぶん初めてだったのでなんかあるだろうなと思ったら以外に全然なにもなくて入稿した日の午後には印刷工程に回ってた。よし、優秀。
ここで力尽きて納品の話がなかったけど普通に段ボールに入って丁寧に梱包されて納品されます。開けるときマジで緊張したのいまだに覚えてるし今でも毎回とんでもねえ落丁とかあったらどうしようと思って手が震える
今はかなり慣れたので工程を端折ったりショートカットしたり背幅しらねえ表紙から描くとか普通にやるようになってるのですが、同人制作ヴァージンの記録はそれはそれで味があるのでおいておきますね。