どぜうが好きだ。
北の僻地に住んでいるとこういう「江戸の食べ物」みたいなものを食すことがない。たまたま仕事柄ここのどじょうをいただくことがあり、こう、味というか「粋を食べる」みたいなことに価値の重きがある食べ物というのはこちらで食べられないので、虜になった。
コロナ前までは出張で年に2〜3度東京へ出ることがあり、大体その度に寄って食べて帰る様にしていたので、今回久々の東京旅行でお邪魔することができた。
好きなので是非食べたことがない酒呑みにお薦めしたく、攻略法をしたためることにした。まだどぜう未体験の諸兄は参考にされたし。
■昼時は外せ
駒形どぜうの良さは8割くらいこの引き寄せ座敷にあります。
が、この席は予約不可。そしてこのコロナ禍でソーシャルディスタンスさせられてしまって客の入り数が激減しているため、以前でも列ができることのあった昼時は避けるのを推奨します。ちなみにド平日はじいちゃんとばあちゃんしかいなかった。快適。
■頼むのはどぜう鍋とささがきごぼう
冬はなまず鍋があったり、鯨料理があったり、それより何より「どぜう柳川」という卵とささがきごぼうでとじた心惹かれる料理があったりするのだけど、心を鬼にしてこの「どぜう鍋」と「ささがきごぼう」を発注してください。お願いしますなんでもしますから
鍋を頼むと、この炭の入った火鉢に乗った薄い丸鍋がやってきます。ついてくる薬味は長ネギ。昔は卓?にひとつ長い木箱が置いてあって、そこに無限にネギが入っていて少なくなったら何も言わず店員さんが山盛りにネギをぶっ込んでまた持ってくるというヘブン状態だったんだけどやめちゃったみたい 残念
ごぼうはなくてもいいんだけど好きだから頼んでいる ごぼううまいやん
到着したらまずごぼうをどぜうの上に乗せて、さらにその上に長ネギをオン。
運ばれてきた段階でもうどぜうはちゃんと食べられる状態になっているので、あとはゆっくりごぼうとネギの状態を見ながら食べるだけです。最初はつゆのせいで少し温度が下がっているので、大人しく発注したお好みの酒を飲んで少し待ちましょう。
ここの酒は季節限定酒とかもあるんだけど、基本京都伏見は北川本家さんの振袖というお酒一本。口が悪いですが最近の流行りの造りではないけれど、少しベタッと甘めでアルコール感強めでキレすぎず最後上向きに少し切って来る、みたいなどこか古風な味がどぜうの風味とつゆの味にめちゃくちゃ合ってて天才 やっぱ酒を基本1種類しか置かない店は信頼できる
「お酒」と頼むと否応なくこれが出て来るのもちょっと酒場慣れしてないとアツい しかもちゃんと常温・ぬる燗・熱燗を選ばせてくれる 天才 店のおすすめも私のおすすめもぬる燗です 食べ物と飲み物の温度を合わせるのは一番簡単で外さないペアですからね…!
で、数分すると鍋が温まってつゆがぐつぐつして来るので、鍋の一番端にあるどぜうを一匹取ってお皿にイン。まだこの段階だとごぼうもネギも煮えていないので、初手一口目はどぜうだけいきましょう。
天然どじょうがどうのこうのみたいなところではないので泥臭さとかも全くないです。内臓も気にならず、骨まで柔らかく煮えているので食べやすい。川魚特有のあの皮目の香りが軽く鼻を抜けるくらいですが、敏感な人とか川魚嫌いな人は気になるかな?そんな時はごぼうとネギを一緒に食べるか、次にご紹介する薬味で打ち消し可能です。
さて、残念ながら皿に取ったどぜうくん単体の写真がなかったので、ネギ以外の薬味のご紹介を…七味と山椒があります。お好みでどうぞ。私は最初七味で行って後半味変で一度山椒に切り替えてラストまた七味で走ります。
数匹どぜうを食べると、鍋にスペースが空いて来るのでそこに上に乗せていたごぼうとネギを落とします。
また炭は勝手にどんどん燃えるので、火力コントロールが効きません。鍋の機嫌を最優先しましょう。具体的には油断してつゆが減ると鍋が焦げ付くので、過敏なくらいつゆがちょっと減ったらつゆを足すだけです。
酔っ払ってくると特に差し忘れて店員さんに足されるという不甲斐ない事態になります。スマートな酔っ払いを気取りたいので、店員さんの助力は借りず俺は慣れているんだぞという感じを演出しましょう。
あとは適宜ごぼうとネギを足しながら同じ所作を繰り返すだけです。マジで火が結構強いので15分くらいでひと鍋なくなるかも ちなみにつゆが煮詰まり過ぎて味が濃くなってるなと思ったら私は飲んでいるお酒を足して薄めています。
今日は欲張りをしたので一人でふた皿食べました。ひと皿ごとにネギがついて来るのでネギ長者になった 私はどぜうがなくなった最後ネギだけつゆでにて七味ふってアテにしながらもう一合酒を飲みます。
今日は頑張ったイベントの打ち上げだったので鍋を食べ終わったあと好物の銀杏の塩煎りを頼みました。あと升酒(振袖の生原酒バージョン)も頼んだけどやっぱ冷えてるよりぬる燗だわ
なんだかんだ2時間くらい飲んでました。最初正座したりお姉さん座りしたりするんですが鍋がくるともう余裕で胡座をかくので短いスカートだけは非推奨です。
それにしてもやっぱり200年の歴史の息吹をちょっと感じられるのは楽しい。東京在住の方で行かれたことのない方は是非お試しください。