ババアの手打ち文字そば

オモコロさんでやっている文字そば(1000文字くらいのエッセイ)やりたくて

酒とサービスとわたし(へべれけ)

12月13日〜15日の2泊3日で、多分産まれて初めて完全な私用で上京した。あまりに楽しいことが多かったので文字そばではなく単純に日記・個人的ログとして感想をしたためたい。

 

普段はもっぱら出張や同期会などのオフィシャル寄りの東京行き、日程が土日にかからないことも多く限られた時間、そのときに可動できる範囲で面白そうなものを摂取して帰ってくる私が、初めての完全な自由を手にしたのである。

そんなわたしはあまりのフリーダム加減に目が眩み、ついつい普段なら死んでも行かないような諭吉が高速でスッ飛ぶお店を探訪したのでログを残しておこうと思う。

今回行ったのは神楽坂の和食と日本酒のペアリングが売りのこちら

和酒会席/ギャラリー「ふしきの」

ウェブで2ヶ月前からの日程は予約可能。それを超えると電話しないとならない。

7品かごはんのついた9品のコースで12000円or15000円。

12月は香箱蟹が1杯入るので7品でも14000円になっており、日和って7品のコースにした。そして「べっ別にたけーからじゃねーし!少食だからご飯はいらねーかもしんねーし!」と誰も居ないのに言い訳をしてしまった。仮にも四捨五入で不惑の年齢の人間のやることではなかったと深く反省している。

そのどちらかのコースにお酒のペアリングをつけるとプラス5000円〜。余談だが、初めて行く店で見るこの「〜」ほど恐ろしいものはない。見るだけで所持していないはずのきんたまが縮む思いがする。でもこれがないと始まらないのできんたまを萎縮させながら頼むことにした。

しめて19000円にサービス料10%に消費税10%。約23000円だ。すごい。八咫で一か月のうちの平日毎日飲んで帰ってもこの金額にならない。すごい。豪遊いや違う俺は学びを得て帰ってくるんだ、これは勉学の一環だとまた空打ちの弁明をしながら予約ボタンをポチった。

当日、宿を門前仲町にしていたので東西線で大好きな人生どうでも飯田橋下車、18時30分予約なのに地下鉄出入り口を出られたのは25分、しかも道程が想定以上に坂で激混みしており、「そうだよな住所神楽坂だったもんな…そりゃ坂だよな…」と思いながら夥しい数の人間を掻き分けてお店へ。

 

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奇跡的にオンタイムで到着していそい急いでとった看板がこれ。わからん。

入店時に名前を告げる時も「ここに至るまでに合計3回くらい予約これやからな!絶対来いよ!的なメールが来ていたのにもし予約が取れてなかったら…」という不安できんたまが縮む。生来のビビりはやはり治るものではない。が、時間と名前を告げたら和装のホール担当お姉さんがにこやかに席に通してくれた。


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開店凸で一番乗り。

店主の宮下さんはお写真通りの物腰の柔らかい方で安心した。なんだかんだ札幌では癖の強いマスターの店を好みすぎているきらいがあるので…

お店は寒くないですか?とお気遣いいただいたがそもそも気温がマイナスの国からやってきている上に全力坂をキメての入店だったので寒いわけがない。「はい。寒いところから来ているので他の方に合わせていただければ…」と前振り。まかせろ、北海道から来ていることを聞かれるトークフローに俺は詳しいんだ。

無事に札幌の民であることをスムーズにお伝えし(このお店のこと、酒屋さんからお聞きになりました?と尋ねられましたが、ただの日本酒オタクから聞いただけですすみません)、早速1品目&1杯目。ちなみに、ふしきのさんのヤバいところは「酒が杯からなくなりそうになったら問答無用でおかわりを注がれる*1」点なので、終盤の記憶がほとんどないことを最初からお伝えしておきます。

■ 1品目:迷い鰹のお造り

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こういう綺麗+食べる人のこと考えた盛り付けすこ

鰹の旬は春と秋ですが、乗る海流を間違ってこの時期に獲られてしまった「迷い鰹」のお造り。おっちょこヒロインかよ…

お酒の写真撮り忘れてましたが竹雀の超辛口うすにごり生新酒の冷やと一緒に。

お酒単体だと舌に触れたときの刺激的なアタック、アルコール感を強く感じる私の舌が得意ではないタイプのお酒ですが、お造りと合わせる薬味が辛み大根なので、その辛さとペアさせてそれぞれの旨味・甘味が立つように調和をとっているのがわかりやすく、初手として素晴らしい選定だなと早速嬉しくてニヤついてしまう。

お造り自体も、血合いから赤身から脂身の多い皮よりのところまで、部位別に楽しめる・上から食べ進めて脂の濃さがグラデーションになるように配置されている・見た目にも美しいと完璧。こういうことなんだよなぁとわからされまくってイイぜ!!

 

■2品目:牡蠣真薯のお椀

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牡蠣にはうるさいぞおばさんもこれにはニッコリ

「しんじょ」ってこういう漢字書くんですね。牡蠣の真薯は初めて食べたかも。ベースの出汁はごく上品なかつお昆布(だと思うん)だけど牡蠣出汁出るし酒のアテになるから少し強めに引いてる気がする。白身魚のつみれに牡蠣の粗みじんがふんだんに混ぜ込まれていて、茶巾で蒸したっぽい形状。牡蠣の美味しい味しかしなくて下処理の丁寧さを感じた。合わせるお酒は山形の羽前白梅。あんまりこっちで見ないから嬉しい。お椀の繊細な部分もしんじょの味の輪郭も分かりやすく、穏やかに寄り添うようなまとまりを感じるなと思ったけど、吸い口の柚子皮が結構厚めに切って添えてあったので下品だけど気になってそれを齧ってお酒を含んだらめちゃくちゃ果皮の香りが立ってまたお椀の表情ががらっと変わったのが印象的だった。

あと、なんかすっごい小さいカブが入ってたのの茎葉の部分が美味しかったけどあんなんどこで売ってんだろうな…

 

■3品目:鰆とウニの低温 二種のジュレ

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いちいち綺麗

鰆とウニは低温で火入れ、かぼすジュレと土佐酢ジュレの2種類を合わせて一緒にいただくお料理。鰆がめちゃんこ美味しい。脂ののり方、下に乗せて上顎で押すと解けるような身のやわらかさ。足の早い魚のイメージがあるけどキレイに仕上がってる。ウニも甘味が濃く出て美味しい。この時期のは高いんじゃないですかねぇ…

で、合わせるお酒は開運をお燗で、お燗のときにちろりに柚子を入れてお酒にも少し柚子の香りをうつしていただきました。このパターンだとお料理とお酒をもう少しブリッジできる要素が欲しかったので、柑橘つながりでそうしているとのこと。確かにお料理とお酒を一緒にいただいてチグハグな感じは一切ない。上手いな~~~上手いな~~~そしえやっぱり鰆がすっげえうめぇな~~~~boniq欲しいな~~~boniq欲しいな~~~誰か買って使わせてくれないかな~~~~~~~~~~~~~~~

 

■4品目:香箱蟹をにゅっにゅしたやつ

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優勝しかない

もうこのあたりから細かい話が怪しいし全部うめぇな!ガハハモードになってるから記憶が死んでる。

わたしが大好きな蟹のミソから子から身から何から全部甲羅に詰めて食うやつです。それ以上でも以下でもないですが、人がにゅっにゅしたカニも乙なものですな…

お酒は満寿泉のLimited Edition。このますいずみ単体でもすげーバランスよくてうめ~~~~~~~~っていう印象しかなかった。もうなんかここで酒がすっごい加速してしまってほんと蟹は良くないですよ…酒盗ってカニのことを言うんじゃないすかね…

ここからマジで記憶が薄いんですがたぶん最後甲羅に丹沢山を入れて飲んでる。たぶん。と思ったら写真が残ってた。偉い。

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カニ、すばらしい生き物

あと宇宙みたいな杯が出てきてすげーテンションが上がって写真をとりまくって日本酒のコーチに送ったら「持ってる」と言われた。クソッ家行ったとき出せよ!!そういうとこ頼むよ!

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器もめっちゃきれい

 

■5品目:牛肉のなんか…焼いたやつ…

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上手に焼かれた肉は旨い

料理名が崩壊していく様を目の当たりにして自分のアルコール許容量の低さに嗚咽を漏らしながらログを残している。これはわたしという人間の人生の記録なのだな…

たしかソースが八丁味噌かなにか…手前と奥にあるのがネギのムース…だったのはうすら覚えていて…ネギのコアコンセプトを抽出してムースに変成したみたいな驚きがあったので多分間違ってない…

一方酒はめちゃくちゃ覚えていて、大倉本家の金鼓の15BYと大倉の山廃特純のブレンドお燗。

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同じ蔵

金鼓は本醸造、大倉は新酒の四段仕込み。本醸造のちゃんと寝てる子ってクソまろやかになってはちゃめちゃ飲みやすいイメージあるんだけど、加齢とともに落ちてしまった部分を四段仕込み新酒生原酒直汲みのボリューム感でうまく補っているイメージ。素直に美味しかったので古酒新酒ブレンドは真似していきたい。

 

■6品目:八寸

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完全に私の嫁、天穏

八寸が出てくる前に、お好きなお酒などありますか?と聞かれ、島根のお酒が好みで特に天穏がお気に入りですという話が口からつるんと出た。最近なんか好きな酒って言われてこれって言えるのがなくなっているな…という気付きがあり今回の学びツアーをキメようと思っていたので、自分でも知らない心の声がポロリしたのが聞けてよかった。そうか、一番最初に好きになった天穏がやっぱり好きなんだな。わたしらしい。

そんで出してもろたのが天穏のやまざくら。飲んだことなかったけどぶわっと勢いよくいろんな味が感じられて少し混乱するくらい美味しかった。少しやんちゃな感じというか、綺麗!まろやか!スムース!とは対極の生命力のある味わいというか、自然・伸びやか…発芽のイメージというか…営みのイメージというか…ハナミズキのPVの後半の間奏って感じ。最近の流行りの感じとは全然違うけどこれをすんなり出せる宮下さんのサービスマンっぷりは素晴らしいなと今思ってしまった。遅い。

器は店主プロデュースのasobi sake ceramics。これほんと香りと口当たりわかりやすくてすこ

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そんで八寸がきた。

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毎日食べたい

八寸が先の方に出てくるイメージがあったので調べたら茶懐石は後ろの方で出るんですね。浅学ここに極まれりだな変なこと言わなくてよかった。野生のサラリーマンが出ちまうところだったぜ…

一番左のヤツはイカで何かを巻いていたんだよな…とかテリーヌはなんだったかな…とか鯖の押し寿司も左と右で違うんだけど部位だったかな…とかすべてをなんとなくしか覚えていないけど確か一番右はあん肝で、すごくクリアな重めの味がやまさくらとすげー良かったんだよな…というのと、左から右に行くにつれて味が重く濃くなっていくグラデーションになっているのもいいな、と思ったような記憶がある気がする。

もうひたすらかすかな記憶を手繰ることしかできないゾーン突入。ちなみに隣の女性二人組とは飲むお酒が違ったので、店主の計らいでお互い交換してちょっとずつ飲んでみましょうしてもらえてハッピーだったが酒のことは一切覚えていない。なんか1つはイラストのラベルだった気が…そしてまた素敵な器がやってきた。ナニコレかわいい。

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マジで記憶がない

 

■7品目:お茶菓子と抹茶

写真はあるがお抹茶をいただいた記憶が一切ないのであまり語ることがない。お店に大変申し訳ない。

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なんていう食べ物かも記憶にない

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お抹茶のお湯用の窯を写したのではないかと推測される

確かお会計は23,000円だったはずだがそれも良く覚えておらず、翌日財布の金から逆算して納得するレベルでずいぶん酒を飲ませてもらったなという感じである。

あと良いわ~~ってなったのは最初に上げた写真にしかちゃんと写っていなかったのだが、ここではチェイサーはお水ではなくオリジナルブレンドの国産茶葉の水出し紅茶が永遠に出てくるところ。口内リセットにめちゃくちゃ優秀でよかった。毎日20ℓくらい作っても全部はけるらしくて恐ろしいな…

フレンチと日本酒ペアリングの会の際に饗される日本酒たちが面白そうすぎるな~と思ってみていたので、次回は是非それをやっている時にお邪魔したい所存。

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右の方のやつ

 

勉強だ勉強だ言ってた割に後半もう「何食っても飲んでもうま~い!わかり手がこうやって料理と酒選んでくれたらそれでいいじゃ~ん!!!!」ってなったので過度に良すぎるものは自己の堕落を招くな…と反省しきりであった(翌日)。

ちなみに翌日はグラブルフェスでそもそもそれに行くための休みだったのだが、飲みすぎて腹を壊して開幕凸に間に合わなかったことも付記しておきたい。

*1:もちろんいらなければ遠慮できますが…